【この記事のポイント】
・ECの分析において、まず初めに見るべき指標は「流入」「転換率(CVR)」「客単価」
・分析の初心者にはRFM分析がおすすめ
今回はシナブルで外部インターン生として働いている村井が弊社社員の酒井にデータ分析に関するインタビューを行いました。
村井:本日はよろしくお願いいたします。まず初めに酒井さんの経歴を簡単にご紹介頂いてもよろしいでしょうか。
酒井:前職ではECの事業者側でECサイトの運営業務を行っていました。具体的にはECサイトの管理や、受発注の対応のみならずカスタマーサポート、物流の部分も合わせて行っていました。さらにその前をさかのぼるとゲーム会社や中古車比較サイトの運営会社に勤めていた時期もありました。
村井:なるほど。では、現在シナブルではどのような業務を行っていらっしゃいますか。
酒井:EC Intelligenceをお使いいただいているお客様に対して操作方法のサポート業務や一歩踏みこんで、お客様のビジネスを加速させることができるようなコンサルティング業務を行っています。
村井:ありがとうございます。では早速、具体的な質問に移っていきたいと思います。まずデータ分析をする際、どのような指標に注目したらよいのか、ECの基本的分析項目などはありますでしょうか。
酒井:まずは「流入」「転換率(CVR)」「客単価」を確認することが重要です。これらの指標は売り上げの基本なので数字分析のベースになってくると思います。
村井:「流入」「転換率(CVR)」「客単価」の3つですね。ではこれらの指標の値がわかった後は、どのようなアクションを起こせばよいのでしょうか。
酒井:例えば「流入」を例に取るのであれば、どの媒体からの流入がどれくらいあるのか、ということを細かく見ていくことが重要になります。そして、どの媒体から来た人はどれくらいのコンバージョンレートなのかという部分に注目することが次のアクションになると思います。
村井:では「転換率(CVR)」や「客単価」のアクションも教えていただきたいです。
酒井:転換率に関しては、どのような経路をたどってきた人が最も転換率が高いのか、どこから流入してきた人が転換率が高いのか、など違う切り口で調べていくことが重要だと思います。
村井:「客単価」に関してはどんな商品が売れているのかという視点をもつことが重要なのでしょうか。
酒井:そうですね。どんな商品をどんなスパンで、どれくらいの量を買っているのか、という部分を見ることが重要だと思います。
村井:ありがとうございます。次の質問に移ります。前回のインタビューで「LTVの分析」「RFM分析」「コホート分析」「客単価の確認」などが挙げられていましたが、これらの分析はEC Intelligenceで実現可能なのでしょうか?
酒井:LTVに関しては、生涯顧客単価という意味であればレポートを出すことができます。RFM分析、コホート分析も顧客ツリー分析を使えばEC Intelligenceでも実現可能です。
村井:ありがとうございます。実際に分析の画面をお見せいただくことは可能でしょうか
酒井:わかりました。まずRFM分析の画面ですが、EC IntelligenceにはすでにR(Recency:最終購入日)とF(Frequency:最終購入日)とM(Monetary:購入金額)の3つの項目があるのでこのようなレポートを作ることができます。
酒井:また、一人当たりの注文金額はカスタム集計値という機能を使って集計値を設計する必要があります。一人当たりの注文金額であれば、「注文金額÷会員数」という計算式を作り、集計値を登録することができます。
酒井:コホート分析であれば顧客ツリー分析を使います。
今回は顧客ツリー分析を用いてセグメントを3つ用意し、レポートが抽出される時間をセットしました。レポート抽出は繰り返し行うことも可能なので、各セグメントに分けたグループがどのように変化していったのかということを定点観測することができます。
酒井:最後に客単価ですが、デフォルトで設定されているのでそこから確認することができます。
村井:次の質問に移ります。前回のインタビューでMAST(マスト)のフレームワークが話題に挙がったと思います。そこで、どの指標を確認することで、どこのフェーズにボトルネックがあると判断できるのでしょうか?
※ここに前回記事の内部リンク入れる
MAST(マスト)のフレームワークについてはこちら
酒井:ウェブサイト内の数字だけみてM(Meet:出会う)のフェーズがボトルネックであると判断することはかなり難しいです。しかし、ウェブサイトを訪れたユーザーがどのページのどの部分を見て、どのような経路をたどってきたのかを確認することでボトルネックの場所を推測する手がかりになると思います。
村井:なるほど。ちなみにウェブサイト内でのユーザーの動きをEC Intelligenceで確認することはできるのでしょうか?
酒井:デフォルトのレポートと接客機能を組み合わせることで実現可能です。ユーザーがページのどこまでを見ているのかを数字で計測することができるようになっています。
村井:なるほど。ではMAST(マスト)のA(Attract:引き付ける)のフェーズがボトルネックであると判断するためには、どの指標を見れば良いのでしょうか。
酒井:正直「商品の魅力が伝わっているか否か」を数値だけで判断することは難しいです。そのため、逆に商品の魅力をもっと過剰にwebサイト内でアピールすることによって、売り上げがどう変化するのかを見るのが一番いいと思います。
村井:もう少し詳しく説明していただいてもよろしいでしょうか。
酒井: 以前お客様と一緒に行った施策で、商品詳細ページのコンテンツをファーストビューに近いところに持っていくという施策を試したことがありました。要は商品ページに行くと、商品の詳細説明がかなり下の方にあって、商品の魅力が全然伝わっていないという仮説が浮上していました。そこで商品説明の部分をファーストビューに近いところに持って行ったところ、売り上げが改善した事例があります。
村井:つまり逆説的にいうと商品の魅力が伝わっていない、というボトルネックに陥っていたということですね。
酒井:その通りです。やはり、A(Attract:引き付ける)の部分がボトルネックであると判断するには単一的な指標で見ることは難しいです。そのため、何かアクションを起こしてその結果としての指標を判断材料にすることが建設的だと思います。
村井:では次にS(Sence:検知する)のフェーズがボトルネックであると判断するためには、どのような指標を見れば良いのでしょうか
酒井: 顧客がどのような動きをしているのかを確認することが重要になってきます。ここではEC Intelligenceの接客機能を使いリファラのURLを取得して、どこから流入してきたのかを調べたいと思います。
酒井:このイベントラベルと書かれているほうが、左のURLを訪れる前に見ていたページになります。このページから例えばgoogleやX(旧Twitter)から自社サイトへ流入してきていることもわかるようになります。そこから、どういったタッチポイントを持ったユーザーが最もコンバージョンが高いのか、ということを調べる形になります。
村井:なるほど。サイト内での顧客の動きや流入経路を確認し、どのような属性の顧客がコンバージョンが高いのかをモニタリングするイメージですね。
酒井:その通りです。
村井:ではT(Trade:商売する)のフェーズがボトルネックであると判断するためにはどの指標を見ればよいのでしょうか。
酒井:これもAttract(引き付ける)のフェーズと一緒で逆説的に検証していくことをおすすめします。例えばメールマガジンでもう少し積極的に売り込みの機会を促すとどうなるのか、ということを検証するのも一つの手だと思います。その結果を見て、今まで売り込みが足りていなかったのか、十分足りていたのか逆説的に判断できると思います。
村井:ありがとうございます。では次の質問に移ります。前回のインタビューで分析の初心者に向けて「これやっておけ」的な分析の例を挙げていただきましたが、他にも「これやっておけ」的な分析がありましたら教えて頂きたいです。
酒井:RFM分析がおすすめです。RFM分析は優良顧客と休眠顧客とその中間顧客といったようにユーザーの温度感を見ていくために行う分析手法です。ユーザーの温度感がわかってくると、温度感別に施策を打つこともできれば行動分析をすることができます。このようにいろんな使い方ができる分析であるためおすすめしたいです。
村井:なるほど。RFM分析はEC Intelligenceではできるのでしょうか。
酒井:デフォルトでRFM分析の項目があるため、分析することができます。
村井:ありがとうございます。次の質問に移ります。客単価(顧客の累計注文金額の平均)を上げることが目標であった場合、まずはどのような指標に注目すれば良いのでしょうか。
酒井:客単価を挙げたいのであれば客単価の高い人の行動を見たほうがいいです。他にも初めてWebサイトを訪れたきっかけや、Webサイトを訪れる頻度、メルマガの開封頻度もチェックしたほうがいいと思います。
村井:それでは、購入回数やメルマガ開封率、どのSNSからの流入が多いのか、という点も重要になってきますね。
酒井:もちろんです。他にもサイト内の行動なども確認したほうがいいと思います。
村井:なるほど。では最後の質問です。分析の初心者がよくやりがちなミスとして「短期的な指標や成果ばかりに注目してしまいがち」が挙げられます。そういったミスを未然に防ぐために日頃から気を付けておくべきことはありますでしょうか。
酒井:一例にはなりますが、コンバージョンや売り上げばかりに注目してしまい「コンバージョンした人は訪問回数何回目だったのか」といった部分にまで目を向けていないケースが見受けられます。例えば、購入した人の多くが訪問回数3回以上であれば、今回購入しなかった人たちにも可能性があることがわかります。
村井:つまり「3回くらい訪問しないと購入しない」ことがわかれば、訪問回数1回目の人たちの訪問回数を増やせるような施策も考えることができる、ということですね。
酒井:そうです。つまり、今回コンバージョンした人の属性や行動特性にまで視野を広げることで、短期的な指標ばかりに目がいってしまうことは防げるのではないでしょうか。
村井:なるほど。これでインタビューを終了させて頂きます。本日はお時間頂きありがとうございました。