
値引きや特典だけでは響かない?通知の「内容」と「タイミング」で信頼を得る時代へ
近年、EC市場の拡大とともに、ユーザーへの通知施策が多様化していますが、一律のセール情報では購買意欲につながりにくい傾向も見られます。
顧客が求めているのは「安さ」だけなのでしょうか。また、パーソナライズされた情報は購買行動やリピート利用にどのような影響を与えるのでしょう。
そこで今回、EC・通販特化のパーソナライズド・プレシジョンCRMプラットフォーム『EC Intelligence』(https://www.scinable.com/)を提供している株式会社シナブルは、ECサイトを月1回以上利用している方を対象に、「EC通知のパーソナライズ化と顧客の購買意欲」に関する調査を実施しました。
調査概要:「EC通知のパーソナライズ化と顧客の購買意欲」に関する調査
【調査期間】2025年8月25日(月)~2025年8月26日(火)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】1,010人
【調査対象】調査回答時にECサイトを月1回以上利用していると回答したモニター
【調査元】株式会社シナブル(https://www.scinable.com/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
約9割がECサイトからリピートで購入経験あり!?
はじめに、「これまでに、同じECサイトで商品をリピート購入したことはあるか」について尋ねたところ、約9割が『よくある(44.6%)』『たまにある(46.2%)』と回答しました。
リピート購入経験が「ある」という方が圧倒的多数を占めており、ECサイトでの継続的な購買行動が一般的であることがうかがえます。
これは、消費者がECサイトに対して一定の信頼や利便性を感じている可能性を示しています。
では、どのくらいの頻度で同じECサイトを利用しているのでしょうか。
ここからは、前の質問で『よくある』『たまにある』『ほとんどない』と回答した方に聞きました。
「最もリピート購入するECサイトでは、どのぐらいの頻度で購入しているか」について尋ねたところ、以下のような回答結果になりました。
『月に1回程度(46.0%)』
『半年に1回程度(41.6%)』
『年に1回程度(9.5%)』
『それ以外(2.9%)』
『月に1回程度』や『半年に1回程度』という方が多いことから、定期的に同じECサイトを利用する習慣が根付いていることがわかります。
実際に、どのようなジャンルの商品を購入することが多いのでしょうか。
「ECサイトでリピート購入する商品は、どのようなジャンルが多いか」と尋ねたところ、『食品・飲料(46.6%)』と回答した方が最も多く、『日用品・消耗品(44.3%)』『美容・ヘルスケア(30.7%)』となりました。
『食品・飲料』や『日用品・消耗品』が上位に挙がっていることから、日常的に消費するジャンルの商品のリピート傾向が強いようです。
また、『美容・ヘルスケア』や『医薬品・サプリメント』など、継続利用や補充が必要なジャンルの商品をリピート購入する方もいることがわかりました。
【あなた専用のセールは購買意欲を高める?】ECユーザーの約4割が「一律より個別通知から購入したい」と回答!
では、どのような理由で「同じECサイトで再度購入したい」と思ったのでしょうか。
引き続き、同じECサイトでのリピート購入経験について『よくある』『たまにある』『ほとんどない』と回答した方に聞きました。

「リピート購入したECサイトの中で、『もう一度同じサイトで購入したい』と思った理由」について尋ねたところ、『価格が安かった(63.0%)』と回答した方が最も多く、『送料が無料だった(46.6%)』『商品の質や品揃えが良かった(38.9%)』となりました。
「価格の安さ」や「送料無料」といった経済的なメリットが、再購入の大きな動機となっていることがわかります。
また、「商品の質や品揃えの良さ」や「好みに合った商品の提案」なども上位になり、品揃えに加えてパーソナライズ化された提案などの要素が選ばれる理由となっていることが浮き彫りになりました。
続いて、特典の中でどのようなものが購買意欲を最も刺激するかを全員にうかがいました。
「セールや割引、クーポンなどの特典のうち、あなたの購買意欲を最も高めるものはどれか」と尋ねたところ、『期間限定のセールや特集キャンペーン(21.8%)』と回答した方が最も多く、『あなただけの特別なクーポン(20.0%)』『ポイント還元率アップ(15.5%)』となりました。
「期間限定」「あなただけ」という限定性のある特典が、消費者の購買意欲を特に高めている傾向が見られます。
こうした限定性は、希少価値や緊急性を感じさせることで行動を促す手法として有効といえますが、「全員向け」と「個別向け」のセールでは、どちらの方がより購買意欲が高まるのでしょうか。

「『あなただけのタイムセール』と『全員一律のセール』どちらの方がより商品を購入しようと思うか」について尋ねたところ、以下のような回答結果になりました。
『あなただけのタイムセール(39.7%)』
『全員一律のセール(28.9%)』
『どちらも変わらない(31.4%)』
『あなただけのタイムセール』が支持を集めたことから、消費者は“自分だけ”という特別感に購買意欲を刺激されやすいことがうかがえます。
一方で、『どちらも変わらない』とする声も約3割を占めており、セールの訴求力は内容やタイミングに左右される可能性がありそうです。
では、現在受け取っているECサイトの通知内容に対して、どの程度満足しているのでしょうか。
「現在受け取っているECサイトの通知内容にどの程度満足しているか」について尋ねたところ、約9割が『とても満足している(21.2%)』『やや満足している(66.4%)』と回答しました。
全体として、現在受け取っているECサイトの通知内容への満足度は高い結果となりました。
しかしながら、内容や頻度に関する満足度には個人差もあり、「満足していない」という方も約1割いることから、今後は通知を一律ではなく、受け取り手の好みに応じて最適化する必要がありそうです。
【値引きだけじゃもう響かない?】ECユーザーが本当に求めているのは「おすすめの精度」と「特別感」だった
購入意欲に影響する要素を探った上で、ECサイトから受け取ると嬉しい情報について尋ねました。

「値引きやセール以外で、ECサイトから受け取ると嬉しい情報や企画はどのようなものか」について尋ねたところ、『自分の興味に合わせた商品の特集(40.2%)』と回答した方が最も多く、『購入した商品の関連商品の提案(30.2%)』『新商品の先行情報(27.7%)』となりました。
「自分の興味に合わせた商品の特集」が最も多く選ばれ、パーソナライズされた情報や企画へのニーズが高いことがうかがえます。
また、「関連商品の提案」や「新商品の先行情報」なども上位に入り、購入後のフォローや先取り感のある情報提供が喜ばれているようです。
情報の内容だけでなく、「このECサイトは自分のことをよくわかっている」と感じられることも、通知の満足度に影響を与えているのではないでしょうか。
そこで、「あなたが『このECサイトは自分のことをわかってくれている』と感じるのは、どのようなときか」について尋ねたところ、『欲しいタイミングでおすすめ商品の情報が届いたとき(39.8%)』と回答した方が最も多く、『購入したことのある商品に直結する関連アイテムの提案(32.0%)』『過去の購入商品に合った特集の情報が届いたとき(28.1%)』となりました。
ECサイトに「理解されている」と感じるポイントとして、「欲しいタイミングで情報が届いたとき」が最多となりました。
これは内容そのもの以上に、“いつ情報が届くか”が体験価値を左右することを示しています。
また、「関連アイテムの提案」「過去の購入商品に合った特集」といった一貫性のある情報も、信頼や好感につながっているようです。
最後に、値引きがなくても購買意欲を促進する通知や提案について聞きました。

「値引きがなくても『購入してもいい』と思えるECサイトからの通知や提案」について尋ねたところ、『自分の好みに合った商品の提案(39.7%)』と回答した方が最も多く、『消耗品がなくなるタイミングで届く通知(26.3%)』『商品の使用シーンをイメージできる提案(16.5%)』となりました。
値引きがなくても購買意欲を引き出す通知や提案として、「自分の好みに合った商品の提案」が最も多く選ばれました。
また、「消耗品がなくなるタイミングでの通知」「使用シーンをイメージできる提案」など、利便性や気配りが感じられる内容も支持されています。
単なる価格訴求ではなく、生活に寄り添うような提案が消費者の信頼や行動を引き出す鍵といえそうです。
顧客理解とタイミング設計が購買意欲を左右する鍵
今回の調査で、ECサイト通知のパーソナライズは、単なる情報配信を超えて購買行動に実質的な影響を与えていることが明らかになりました。
リピート購入経験が「ある」という方が約9割を占め、ECサイトを継続的に利用する習慣が広がっていることが示されています。
その中でも「月に1回程度」利用するという回答が最も多く、定期的な購買行動の存在が浮き彫りとなりました。
こうした行動を支える要因としては、依然として「価格の安さ」「送料無料」といった経済的メリットが根強く挙げられていますが、一方で「好みに合った商品提案」も上位に入り、利便性に加えて「自分に合っている」と感じられる体験価値が重視されつつあることも確認されました。
また、購買意欲を高める特典として「期間限定セール」「あなただけのクーポン」といった限定感のある特典が高く評価される傾向も見られました。
特に、「あなただけのタイムセール」への意識が「全員一律のセール」を上回る結果からも、「自分向け」の打ち出し方がいかに消費者心理に響くかが裏付けられました。
さらに、現在受け取っている通知内容についての満足度も約9割と高いことがわかりました。
受け取ると嬉しい通知内容として支持されたのは「興味に合わせた特集」や「関連商品の提案」であり、商品購入を前提としない情報でも、適切な切り口や構成によって関係性の強化につながっていることがうかがえます。
特に「欲しいタイミング」や「自分の好み」にフォーカスされた通知が、「このサイトは自分をわかってくれている」という感覚を生む重要な要素であることも明らかになりました。
値引きがなくても購買行動を後押しする通知として、「自分好みの商品提案」「消耗品のリマインダー」などが挙げられており、ECサイトがユーザーの生活文脈を理解したうえで提案する姿勢が、信頼や利用意向の維持に直結していると考えられます。
これらの結果から、ECサイトの通知において重要なのは「内容の最適化」だけでなく、「届ける相手」「届けるタイミング」「届け方」まで含めた設計にあるといえるでしょう。
※本レポートのPDF版をご希望の方はこちらからダウンロードください。https://www.scinable.com/document/ECpersonalized-notification-survey