ECサイトを運営していると、「もっと売上を伸ばしたい」「リピーターを増やしたい」といった悩みは尽きないもの。そんな悩みを解決するカギとなるのが、顧客分析です。
本記事では顧客分析の具体的な手法として、RFM分析、デシル分析、セグメンテーション分析など7つの手法を解説。それぞれの手法の特徴や活用シーン、分析の手順などを詳しく紹介します。売上アップを目指すECサイト運営者の方は、ぜひ本記事を参考に、顧客分析に取り組んでみてください。
顧客分析とは
顧客分析とは、自社の商品やサービスを購入してくれる顧客の属性や行動、ニーズなどを詳細に分析し、理解を深めることです。ここでは、顧客分析の目的や分析項目について解説します。
顧客分析の目的
データに基づいて顧客を正しく理解することは、マーケティング戦略の立案や施策の改善に欠かせません。顧客分析は、以下5つの目的で実施されています。
- 顧客ニーズの把握と商品・サービスの改善
顧客の購買行動や満足度、声などを分析することで顧客が真に求めているものを理解し、それに合わせて商品やサービスを改善することができる - マーケティング施策の最適化
顧客の属性や行動パターンを理解することでセグメンテーションを行い、各セグメントに合わせたマーケティング施策を立案・実行できる - 顧客生涯価値(LTV)の向上
顧客の購買履歴や行動履歴を分析し、優良顧客の特徴を把握することで、LTVの高い顧客を増やすための施策を打ち出すことができる。また休眠顧客の再活性化にも役立つ - 新商品・新サービスの開発
顧客分析によって顧客のニーズや課題を的確に捉え、新たな商品・サービスを開発することで、競合との差別化を図れる - 経営判断の支援
顧客分析により自社の強みや弱み、機会や脅威を客観的に評価することで、データに基づいた判断を下すことができる
このように顧客分析は様々な目的で活用されており、自社の課題や目標に合わせて適切な分析を行うことが重要といえます。
顧客分析の分析項目
ECビジネスにおける顧客分析では顧客の属性情報や購買履歴、行動履歴など、様々なデータを分析の対象とします。主な分析項目としては、以下のようなものが挙げられます。
- 購買履歴(購入商品、購入金額、購入頻度、最終購入日など)
- 行動履歴(Webサイトの閲覧履歴、問い合わせ履歴、キャンペーンの反応など)
- 顧客満足度やロイヤルティに関するデータ(アンケート結果、NPS等)
- 顧客の声(問い合わせ内容、レビュー、SNSでの言及など)
- 顧客の属性情報(年齢、性別、居住地、職業など)
なお分析項目は事業の形態や扱う商品・サービスによって異なります。数値化できる「定量データ」と言葉で表現される「定性データ」をバランス良く組み合わせ、目的に応じて必要な項目を選定することが重要です。
マーケティング活動で顧客分析しないとどうなるのか
顧客分析を行わずにマーケティング活動を進めると、様々な問題が生じる可能性があります。ここでは、顧客分析を怠った場合に起こりうる5つの事態について見ていきましょう。
的外れなマーケティング施策を打ってしまう
顧客分析を行わないと、ターゲットとする顧客層のニーズや特性を正確に把握できません。その結果、顧客の関心や需要とかけ離れたマーケティング施策を実施してしまう危険性があります。
顧客のニーズを的確に捉えられないため、マーケティング施策の効果は限定的なものになってしまうでしょう。
無駄なコストがかかる
顧客分析なしでマーケティング活動を行うと、無駄なコストがかかる可能性が高まります。
ターゲットを絞り込めていない状況で宣伝活動を行うことになるため、広範囲にアプローチせざるを得なくなるからです。関心の低い顧客層にもアプローチすることになり、広告費用や制作コストなどがかさんでしまいます。
競合他社に顧客を奪われる
自社の顧客層や顧客ニーズを把握できていないと、競合他社との差別化を図ることができません。その結果、競合他社に顧客を奪われる可能性があります。
一度流出した顧客を取り戻すのは容易ではなく、顧客離れが進むと収益性が悪化します。
顧客満足度が低下する
顧客のニーズや課題を正しく理解していなければ、期待に沿った商品やサービス、サポートを提供することができません。その結果、顧客の不満や不信を招き、満足度の低下につながります。
特にロイヤルティの高い優良顧客ほど期待値が高く、一度の失望で大きく離反してしまうリスクがあります。ネガティブな口コミが広がることでブランドイメージが傷つき、新規顧客の獲得にも影響が出てしまうでしょう。
マーケティング戦略の改善ができない
マーケティング施策の効果を測定し、改善につなげるためには顧客分析が不可欠です。施策の実施前後で顧客の反応や行動がどう変化したのかを分析しなければ、何が成功要因で、何が課題なのかを特定できないためです。
顧客分析なしではPDCAサイクルを回すことができず、マーケティング戦略の改善も滞ってしまうでしょう。
顧客分析の7つの手法
顧客分析には様々な手法がありますが、ここでは代表的な7つの手法について詳しく解説します。それぞれの手法の特徴を理解し、目的に合った手法を選択しましょう。
RFM分析
RFM分析とは、顧客の購買行動を「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標で分析し、顧客をセグメント化する手法です。
この分析では、まず顧客ごとにRFMの3指標を算出します。そして各指標のスコアに応じて顧客を「優良顧客」「普通顧客」「離反顧客」などのグループに分類していきます。例えば最終購入日が直近にあり、購入頻度も高く、購入金額も多い顧客は、自社にとって最も価値の高い「優良顧客」といえるでしょう。
RFM分析は比較的シンプルな手法であり、分析に慣れていない企業にもおすすめの手法といえます。ただし購入頻度の低い商品や季節性の高い商品には不向きな面もあるため、他の分析手法と組み合わせながら柔軟に活用していくことが大切です。
RFM分析の有効な活用シーン
|
RFM分析については下記でも解説していますので、こちらもぜひご確認ください。
関連記事:RFM分析とは?目的や優良顧客を見つける手順・ポイントを詳しく解説
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客を特定の変数や属性に基づいてグループ分け(セグメント化)し、各セグメントの特徴を明らかにする分析手法です。
以下のような変数を用いて、顧客を同じ特性を持つグループに分類していきます。
- 地理的変数:居住地域、気候、人口密度など
- 人口統計的変数:年齢、性別、職業、収入、家族構成など
- 心理的変数:ライフスタイル、性格、価値観など
- 行動変数:購買チャネル、購入頻度、ブランドロイヤルティなど
セグメンテーションを行えばターゲットとなる顧客層を明確にし、それぞれのグループに最適なアプローチを取ることが可能になります。例えば若年層向けのキャンペーンを実施したり、特定の地域に集中的にプロモーションを行ったりするなど、より個別化されたマーケティングが実現できるのです。
先ほどのRFM分析と比べると、セグメンテーション分析は顧客の属性により着目した分析手法だといえます。購買履歴だけでなく、顧客の特性を多面的に捉えることができるのが強みです。一方で、分析に必要なデータ量は多くなる傾向にあります。
セグメンテーション分析の有効な活用シーン
|
デシル分析
デシル分析とは、顧客の購入金額データを用いて、顧客を10等分のグループに分類し、各グループの特徴を分析する手法です。
まず顧客を購入金額の高い順に並べ、10等分します。次にデシル1からデシル10までの購入金額合計や全体に占める割合などを算出し、グループ間で比較します。
各デシルを比較することにより、売上に大きく貢献している優良顧客層を特定できる仕組みです。優良顧客層の特徴を掴むことで、マーケティング施策の優先順位付けや各グループに適した施策の立案が可能になります。
デシル分析は購入金額という単一の指標のみを用いるシンプルな手法であるため、手軽に実施できるのが強みです。ただし購入頻度や直近の購入日など他の要素は考慮されないため、RFM分析など他の分析手法と組み合わせることが推奨されます。
デシル分析の有効な活用シーン
|
デシル分析については下記でも解説していますので、こちらもぜひご確認ください。
関連記事:デシル分析とは?活用のメリット・デメリットから実施手順まで解説
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、特定の時期に着目して顧客の購買行動を分析する手法です。季節や曜日、時間帯などの時間軸と性別や年齢などの顧客属性を組み合わせ、例えば「夏場は20代男性の購買が増加している」というように、どのような顧客層がいつ購買しているかを明らかにします。
行動トレンド分析の目的は、顧客のニーズを正確に把握し、最適なタイミングで最適な顧客層にアプローチすることです。効果的なマーケティング施策の立案や売上の向上、顧客満足度の改善などに活用されています。
ただし行動トレンド分析は季節性の高い商品やサービスに適しており、日用品のような季節性の低い商品には向いていません。アパレル業界や食品業界、旅行業界などで有効な手法といえます。
デシル分析の有効な活用シーン
|
CBT分析
CTB分析とは、顧客の購買行動を「カテゴリ(Category)」「テイスト(Taste)」「ブランド(Brand)」の3つの指標で分析し、顧客をグループ分けする手法です。
まず購入商品をファッションアイテムや食品などの大分類(カテゴリ)に分け、さらにTシャツやYシャツなどの小分類に細分化します。次に色やサイズ、デザインなどの顧客の好み(テイスト)を分析します。最後に、ブランドやキャラクターなどの顧客が好むブランドを把握します。
これら3つの指標を組み合わせることで、顧客を詳細にグループ分けできます。例えば「20代女性で、ピンク色の小物を好み、◯◯のキャラクターを好むグループ」といった具合です。
CTB分析の目的は、顧客グループごとの嗜好を理解し、それぞれに最適な商品提案やプロモーションを行うことです。定性的な嗜好に着目できる点が強みといえます。
ただし分析にはある程度の商品数と顧客数が必要であり、また嗜好の変化にも留意が必要です。
CTB分析の有効な活用シーン
|
コホート分析
コホート分析とは、ユーザーを共通の特性や行動で集団(コホート)に分類し、各コホートの行動や指標の変化を一定期間追跡する分析手法です。例えばECサイトの場合、ある期間に新規登録したユーザーをコホートとして設定し、そのコホートが時間経過とともにどのくらいリピート購入しているかを分析します。
コホート分析の目的は、ユーザーの定着率や離脱率を把握し、サービスの課題を発見・改善することです。 各コホートの行動を比較することで、機能改善やキャンペーンなどの施策が与えた影響を評価できます。
コホート分析に必要なのは、ユーザーIDと行動ログです。 Googleアナリティクスなどのツールを使えば、手軽にコホート分析を始められます。
ただしコホート分析は一時的な変化を捉えにくいという欠点もあります。 他の分析と組み合わせ、より多角的にユーザー行動を理解することが必要です。
コホート分析の有効な活用シーン
|
LTV分析
LTV分析とは、顧客生涯価値(Life Time Value)を算出し、顧客との長期的な関係性や収益性を分析する手法です。
LTVは、ある顧客が一定期間に企業にもたらす利益の総額を表します。具体的には顧客の平均購入額、購入頻度、取引期間などのデータから算出され、例えば「年間購入額×利益率×継続年数」といった計算式が用いられます。
LTV分析の目的は、優良顧客の特徴を明らかにし、マーケティング施策の最適化や顧客維持率の向上につなげることです。LTVの高い顧客層に注力することで、効率的な収益拡大が期待できます。
ただしLTVは業種や商品・サービスの特性によって計算方法が異なるため、自社に適した算出方法を選ぶ必要があります。また将来の予測に基づく指標であるため、精度の向上にはデータの蓄積と分析の継続が欠かせません。
LTV分析の有効な活用シーン
|
顧客分析の手順6ステップ
顧客分析を効果的に行うためには、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、顧客分析の6つのステップを解説します。
1. 分析目的を明確にする
顧客分析の第一歩は、分析の目的を明確に定義することです。新規顧客の獲得、既存顧客の満足度向上、顧客の購買行動の予測など、具体的な目標を設定します。
ECの顧客分析で最も大切な目的は、分析結果を施策に活かすことです。分析だけで終わってしまっては売上アップや改善につながりません。
そのため、施策につながる軸での分析を行うのが大切になります。
下記のようなクロス集計を行うことで、施策につながる示唆や仮説を導き出しやすくなります。
- 購買履歴 × LTV
LTVが高い顧客がよく買っている商品は何か?
→その商品をおすすめすれば、他の顧客のLTVも高まるのではないか。 - RFM × 購買履歴
年間購入回数が高い顧客がよく買っている商品は何か?
→その商品をおすすめすれば、購入回数が増えるのではないか。
目的を明確にすることで分析の方向性が定まり、必要なデータや分析手法の選定がスムーズになります。
2. 目的に合った分析手法を選定する
分析の目的が明確になったら、その目的達成に適した分析手法を選定します。
顧客分析手法はそれぞれ特徴や用途が異なり、目的に合った手法を選ぶことで効率的かつ効果的な分析が可能になります。また選定した手法に必要なデータの種類や量も確認しておきましょう。
3. 必要なデータを収集する
分析手法が決まったら、その手法に必要なデータを収集します。
社内の顧客データベースやCRMシステム、Webサイトのアクセスログ、アンケート調査の結果など、複数の情報源からデータを集めましょう。データの品質や整合性にも注意を払い、分析に耐えうるデータを確保することが重要です。
4. データを前処理・クレンジングする
収集したデータはそのままでは分析に使えない場合があります。欠損値や重複データ、不整合なデータなどを取り除く前処理・クレンジング作業が必要です。
またデータの形式を統一したり、分析しやすい形に変換したりする加工も行います。データの品質を高めることで、分析の精度を上げることができます。
5. 分析を実行する
前処理・クレンジングしたデータを用いて、選定した分析手法で実際に分析を行います。分析ツールを活用したり統計的な手法を適用したりして、データから意味のある情報を引き出しましょう。
分析の過程では仮説を立てて検証したり新たな発見を探ったりと、試行錯誤が必要になることもあります。
6. 分析結果を解釈し活用する
そして分析結果を正しく解釈し、ビジネスに活用します。単なるデータの羅列ではなく、顧客理解につながる示唆を導き出すことが大切です。そして、施策を実行することが大切です。
分析結果をマーケティング施策や商品開発、顧客サポートの改善などに反映させ、具体的なアクションにつなげましょう。また分析結果をわかりやすく可視化し、関係者と共有することも大切です。
7.仮説や示唆を導き出し、施策を立案し、実行する
分析結果を見るだけで終わっては意味がありません。
施策を立案し、実行することで顧客数増加や売上アップといった結果につながります。
顧客分析で注意したいポイント
最後に、顧客分析を成功に導く3つのポイントについて解説します。
適切なKPIを設定する
顧客分析を行う際は、適切なKPIを設定することが大切です。
KPIは顧客分析の目的に沿って、達成すべき目標を具体的な数値で表したものです。例えば顧客満足度の向上を目的とする場合「NPSを10%向上させる」といったKPIを設定します。KPIを設定する際は、以下の点に注意しましょう。
- 目的に合致したKPIを選択する
- 現実的に達成可能な目標値を設定する
- KPIの数は絞り込み、重要なものに焦点を当てる
- KPIの進捗を定期的にモニタリングし、必要に応じて修正する
適切なKPIを設定することで顧客分析の方向性が明確になり、効果的な施策の立案につながります。またKPIの達成度を定期的に確認することで分析の進捗状況を把握し、改善点を見つけることができます。
定期的に分析を行う
顧客の嗜好や行動パターンは常に変化しているため、定期的に顧客分析を行うことが重要です。一度分析を行ったら終わりではなく、継続的に分析を実施し、最新の顧客像を把握しましょう。
分析の頻度は業界や商品・サービスの特性によって異なりますが、少なくとも四半期に1回は分析を行うことが望ましいでしょう。また新商品の発売や大型キャンペーンの実施など、大きな変化があった際には臨時で分析を行うことも検討すると良いです。
分析結果を実際の施策に活かす
顧客分析で得られた知見は、実際のマーケティング施策に活かすことが何より重要です。分析結果を単なる情報として留めるのではなく、具体的なアクションにつなげなければ分析の意味がありません。
分析結果を施策に活かすためには、以下のようなステップを踏むことが有効です。
- 分析結果から得られた示唆を整理する
- 示唆に基づいて、施策のアイデアを出す
- アイデアを評価し、優先順位をつける
- 選択した施策を実行に移す
- 施策の効果を測定し、分析結果にフィードバックする
このように分析と施策の実行を連動させることでPDCAサイクルを回し、継続的な改善につなげることができます。
EC・通販の顧客データ活用ならEC Intelligenceにご相談を
顧客分析は、ECサイトの売上アップに欠かせない取り組みです。RFM分析、デシル分析、セグメンテーション分析など様々な手法を組み合わせることで顧客の行動や嗜好を多角的に理解し、マーケティング施策の最適化につなげることができます。
ただし複数の分析ツールを使い分けるのは手間がかかり、データの一元管理も難しくなります。そこでおすすめなのが、EC特化型のオールインワンMA/CRMツール「EC Intelligence」です。
EC Intelligenceは顧客分析に必要な機能を網羅しており、一つの管理画面からあらゆる施策を実行できます。データの自動収集、分析とターゲティング、コンテンツ配信の自動化など、ユーザー体験の最適化をワンストップで実現。300サイト以上のEC構築で培ったノウハウに基づいた機能で、売上アップを強力にサポートします。
さらに高速で安定した動作と、開発エンジニアによる迅速なサポート体制も大きな強みです。中規模以上のサイトなら、ツール利用料を30〜50%削減できるケースも。
顧客分析を通じて売上アップを目指すなら、ぜひEC Intelligenceの導入を検討してみてください。