顧客の価値を正確に把握し、効果的なマーケティング戦略を立てたいと考えている方も多いのではないでしょうか。そんな悩みを解決する手法としてRFM分析が注目されています。
本記事では、RFM分析の基本概念から実施手順、効果的な活用方法まで詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、自社の顧客分析にお役立てください。
RFM分析とは
RFM分析は、顧客の購買行動を3つの指標で分析し、顧客をセグメント化する手法です。ここでは、RFM分析の基本概念を解説します。
RFM分析で使われる3つの指標
RFM分析では「Recency(最新購買日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(購買金額)」の3つの指標を用いて顧客を評価します。
- Recency(最新購買日):最後に購入してからどれくらい経過しているか。最近購入した顧客ほど再購入の可能性が高いとされる
- Frequency(購買頻度):どれくらいの頻度で購入しているか。頻繁に購入する顧客は、ブランドへの信頼度が高く、ロイヤルティも高い傾向にある
- Monetary(購買金額):どれくらいの金額を使っているか。顧客の価値を直接的に表す指標となる
この3つの指標を用いて以下のようにグルーピングを行い、各グループの分析を行うのがRFM分析です。
これらのセグメントに基づいて、各グループに適したマーケティング戦略を立てていきます。
なお、R・F・Mの3軸でセグメントすると実際には理解しづらいため、実務ではR・FやR・Mなどの2軸で分析やセグメントを行うことをおすすめしています。
分析において大事なのは、分析を行っている人が、内容を理解して施策に活かすことです。 そのため、複雑になりがちな3軸でのセグメントではなく2軸でのセグメントをおすすめしています。
ちなみに、3つの指標の中で最も大事だと言われているのが、R(直近購入日)です。Rが近いほど、よく買っており、Rが遠いほど離反の可能性があるということがすぐに分かるからです。
RFM分析の目的
RFM分析の主な目的は、顧客をセグメント化し、それぞれのセグメントに適したマーケティング戦略を立案することです。
例えばRFM分析によって優良顧客を特定できれば、該当する顧客層を重点的にケアすることで顧客ロイヤルティを高められるでしょう。また離反顧客には再購入を促すキャンペーンを実施することで、顧客の再活性化を図ることができます。
このように顧客セグメントごとに最適なアプローチを選択することで、企業は顧客との関係を強化し、売上や利益の向上につなげることができます。また狙いを定めて施策を実行できるため、マーケティング投資の効率を高めることにもつながるでしょう。
RFM分析とデシル分析の違い
RFM分析とデシル分析はどちらも顧客分析の手法ですが、特徴や適用範囲に違いがあります。
RFM分析 |
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デシル分析 |
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企業の目的や利用可能なリソースに応じて2つの分析手法を使い分けたり、組み合わせたりすることで、より効果的な顧客戦略を立てることができるでしょう。例えば、まずデシル分析で大まかな顧客層を把握し、その後RFM分析でより詳細な顧客理解を進めるといった方法が考えられます。
デシル分析については下記の記事で詳しく解説していますので、こちらもぜひご覧ください。
関連記事:デシル分析とは?活用のメリット・デメリットから実施手順まで解説
RFM分析のメリット
RFM分析には様々なメリットがあります。主なメリットを3つ見ていきましょう。
自社が取り組むべき課題が明確になる
RFM分析のメリットとして、自社が取り組むべき課題が明確になる点が挙げられます。
例えば優良顧客の割合が少ない場合、顧客ロイヤルティ向上施策の必要性が浮き彫りになるでしょう。また新規顧客の継続率が低い場合は、初回購入後のフォローアップ強化が課題として挙げられます。休眠顧客が多い場合は、再活性化を目的としたキャンペーンの実施が必要かもしれません。
このようにRFM分析によって顧客セグメントごとの特徴を把握することで、各セグメントに適したアプローチ方法を検討できるようになります。結果として効果的なマーケティング施策の立案が可能になり、限られたリソースを最適に配分できるようになります。
情報が少なくても始められる
RFM分析のメリットの一つは、比較的少ない情報でも分析を開始できることです。必要な基本情報は以下の3点のみです。
- 最終購買日(Recency)
- 購買頻度(Frequency)
- 購買金額(Monetary)
これらの情報は基本的な顧客データから抽出可能です。そのため詳細な顧客属性情報や行動履歴がなくてもRFM分析を実施することができます。
また分析に必要なデータ量も比較的少なく、短期間のデータでも有効な分析が可能です。新規事業や新しいサービスを始めたばかりの企業でも、早い段階から顧客分析を行うことができます。
短期的な売上向上につながる
RFM分析は、短期的な売上向上につながる点もメリットです。顧客層ごとに売上アップ施策を展開することで、短期間で売上向上の効果が期待できます。
- 優良顧客向け:VIP会員制度を導入したり、限定商品の先行販売を行ったりすることで、さらなる購買を促進することができる
- 新規顧客向け:初回購入特典の強化やフォローアップメールの最適化を行うことで、2回目以降の購入を促進するキャンペーンを展開できる
- 休眠顧客向け:再来店促進クーポンの送付や新商品情報の提供、パーソナライズされたリマインドメールなどを実施することで、再度の購買を促すことができる
またRFM分析に基づく施策は効果測定も容易なため、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善が可能です。より効果的なマーケティング活動を展開し、持続的な売上向上につなげることができるでしょう。
RFM分析のデメリット
RFM分析は顧客分析の有効な手法ですが、いくつかのデメリットも存在します。以下では、RFM分析の主な課題点について詳しく解説します。
商品の特性が考慮されない
RFM分析の課題の一つは、商品の特性が考慮されないことです。RFM分析では、最新購買日(Recency)、購買頻度(Frequency)、購買金額(Monetary)の3つの指標のみを用いるため、顧客が購入した商品の種類や特性は分析対象外となります。
例えば高額な商品を1回購入した顧客と、低価格の商品を頻繁に購入する顧客が同じグループに分類される可能性がありますが、本来これらの顧客に対する適切なアプローチは異なるはずです。
また季節性の高い商品や、ライフステージの変化に伴って購入パターンが大きく変わる商品(例:ベビー用品)の場合、RFM分析だけでは顧客の真のニーズや購買行動を正確に把握することが難しくなります。
この課題に対処するには、RFM分析に加えてセグメンテーション分析やCTB分析を併用することが効果的です。
関連記事:顧客分析とは?7つの手法や手順、分析に有効なツールを解説
データに持続性がない
RFM分析のもう一つの課題点は、データの持続性が低いことです。RFM分析は、ある特定の時点での顧客の購買状況を反映したものであり、時間の経過とともにデータの有効性が低下していきます。
例えば分析時点では優良顧客として分類された顧客が、その後購買を停止してしまう可能性もあります。逆に、休眠顧客として分類された顧客が突然活発な購買活動を再開することもあるでしょう。このように、RFM分析の結果は時間とともに変化する可能性が高く、常に最新の状況を反映しているとは限りません。
定期的にRFM分析を実施し、顧客の状況変化を継続的に把握することが、RFM分析を効果的に活用する鍵となります。
購入頻度の低い商品には不向き
RFM分析は購入頻度の高い商品やサービスに適した分析手法ですが、購入頻度の低い商品には不向きという側面があります。
例えば高額な耐久消費財(自動車、家電製品など)やライフイベントに関連する商品(結婚式関連商品、葬儀サービスなど)は、顧客が頻繁に購入するものではありません。このような商品やサービスの場合、RFM分析の「Frequency(購買頻度)」指標の有効性が低下し、顧客の真の価値や重要性を正確に評価することが難しくなります。
購入頻度の低い商品を多く取り扱っている場合は、RFM分析を他の分析手法と組み合わせることが効果的です。顧客生涯価値(CLV)分析や顧客ロイヤルティ分析を併用するなど、購入間隔を考慮した分析手法を検討しましょう。
RFM分析のやり方・手順
ここからは、RFM分析の実施方法を4ステップで解説します。
1. データを準備する
RFM分析の第一歩は、適切なデータの準備です。必要なデータは顧客ごとの購買履歴で、具体的には以下3つの情報が含まれている必要があります。
- 最終購買日(Recency)
- 購買頻度(Frequency)
- 購買金額(Monetary)
これらのデータは、POSシステムや顧客管理システムから抽出することが可能です。一般的には過去1年間のデータを使用することが多いですが、商品やサービスの特性に応じて期間を調整することも検討しましょう。
またデータの品質にも注意が必要です。重複データや異常値がないか、名寄せが適切に行われているかなどを確認し、必要に応じてデータクレンジングを行うことをおすすめします。
2. 項目ごとにヒストグラムで見える化する
データの準備が整ったら、次は項目(R・F・M)ごとにヒストグラムを作成し、データの分布を可視化します。ヒストグラムの作成には、ExcelやRなどの統計ソフトを使用すると便利です。各項目について以下のような観点で分析を行います。
- Recency:最終購買日からの経過日数の分布
- Frequency:購買回数の分布
- Monetary:総購買金額の分布
ヒストグラムを作成することで、例えば「最終購買日が3ヶ月以内の顧客が全体の何%を占めるか」「月に1回以上購入する顧客の割合はどのくらいか」といった情報が視覚的に理解できるようになります。
3. 顧客を分類する
ヒストグラムの分析結果を基に、顧客を分類します。各項目を3〜5段階に分け、それぞれにスコアを付ける形が一般的です。例えば5段階評価の場合、以下のような基準で分類することができます。
- Recency:1ヶ月以内=5点、1〜3ヶ月=4点、3〜6ヶ月=3点、6〜12ヶ月=2点、12ヶ月以上=1点
- Frequency:10回以上=5点、7〜9回=4点、4〜6回=3点、2〜3回=2点、1回=1点
- Monetary:10万円以上=5点、5〜10万円=4点、3〜5万円=3点、1〜3万円=2点、1万円未満=1点
これらのスコアを合計し、顧客をランク付けします。例えばRFMの合計スコアが13〜15点の顧客を最優良顧客、10〜12点を優良顧客、7〜9点を一般顧客、4〜6点を要注意顧客、3点以下を離反顧客といった具合です。
4. 分析結果から施策を考える
顧客分類が完了したら各グループの特徴を分析し、それぞれに適した施策を検討します。例えば、以下のような施策が考えられます。
- 最優良顧客:VIP向けの特別サービスの提供、新商品の先行案内
- 優良顧客:ポイント還元率の引き上げ、クロスセルの提案
- 一般顧客:購買頻度向上のためのキャンペーン実施
- 要注意顧客:再来店促進のためのクーポン配布
- 離反顧客:アンケート調査による離反理由の把握、再活性化キャンペーンの実施
これらの施策を実行し、その効果を測定するPDCAサイクルを回していくことが大切です。定期的にRFM分析を実施し、顧客の動向を把握しながら施策の改善を続けていくことで、より効果的な顧客戦略を構築することができるでしょう。
RFM分析を効果的に行うポイント
ここからは、RFM分析を成功させるための5つのポイントについて詳しく解説します。
分析の目的を明確にする
RFM分析を始める前に、なぜこの分析を行うのか、その目的を明確にすることが重要です。
目的が明確になれば分析の焦点が絞られ、より効果的な結果を得ることができます。また目的に応じて分析の深さや範囲を調整することも可能になります。
明確な目的設定は分析後の施策立案にも直結するため、チーム内で十分に議論し、共通認識を持つことが大切です。
適切な分析期間を設定する
RFM分析の精度は、分析対象とする期間の設定に大きく影響されます。一般的には過去1年間のデータを使用することが多いですが、業界や商品特性によって適切な期間は異なります。
例えば季節性の高い商品を扱う場合は、1年以上の期間を設定して季節変動を考慮する必要があるかもしれません。逆にトレンドの変化が激しい業界では、より短い期間での分析が適している場合もあります。
また新規顧客と既存顧客で異なる期間を設定することも検討しましょう。適切な分析期間を設定することで、より現実的で有用な分析結果を得ることができます。
顧客をグループ分けする基準を決める
RFM分析では、R(最新購買日)、F(購買頻度)、M(購買金額)の各指標をどのように区分けするかが重要です。一般的には各指標を3〜5段階に分けることが多いですが、自社の顧客特性や商品特性に合わせて適切な基準を設定しましょう。
例えば高額商品を扱う企業では、Mの基準値を高めに設定する必要があるかもしれません。また顧客のライフサイクルが長い業界では、Rの基準を長めに設定することも考えられます。
グループ分けの基準は分析結果に大きく影響するため、試行錯誤しながら最適な基準を見つけることが大切です。定期的に基準を見直し、必要に応じて調整することも忘れずに行いましょう。
他の分析手法と組み合わせる
RFM分析は他の分析手法と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
- RFM分析×デシル分析:売上貢献度の高い顧客層をより詳細に把握できる
- RFM分析×セグメンテーション分析:RFMスコアと顧客属性の関連性を明らかにできる
- RFM分析×LTV分析:長期的な顧客価値の予測に活用できる
このように他の分析手法と組み合わせることで、RFM分析の結果をより多角的に解釈し、効果的なマーケティング戦略の立案につなげることができるでしょう。
関連記事:顧客分析とは?7つの手法や手順、分析に有効なツールを解説
関連記事:デシル分析とは?活用のメリット・デメリットから実施手順まで解説
分析結果を活用する体制を整える
RFM分析の結果を効果的に活用するためには、組織内での体制づくりが重要です。分析結果を共有し、解釈するための定期的なミーティングを設けましょう。マーケティング部門だけでなく、営業部門や顧客サポート部門など、顧客と接点のある部署も巻き込むことが大切です。
また分析結果に基づいて立案した施策を迅速に実行できる体制を整えることも重要です。例えば優良顧客向けの特別キャンペーンを即座に展開できるよう、事前に承認プロセスを簡略化しておくなどの工夫が考えられます。
RFM分析を行えるツール
RFM分析を効果的に実施するためには、適切なツールの選択が重要です。ここでは、RFM分析に活用できる代表的なツールを4つのカテゴリーに分けて紹介します。
CRMツール
CRMツール(顧客関係管理ツール)は、RFM分析を含む様々な顧客分析機能を備えています。
CRMツールの利点は、顧客とのやり取りや購買履歴などの情報を統合的に管理できることです。そのため、RFM分析の結果を即座にマーケティング施策や営業活動に反映させることが可能となります。
ただし導入コストが比較的高く、使いこなすまでに時間がかかる場合があるため、企業規模や目的に応じて選択することが大切です。
専用の分析ツール
RFM分析に特化した専用ツールも数多く存在します。これらのツールはRFM分析に必要な機能が最適化されているため、効率的に分析を行うことができます。
専用ツールの特徴は、直感的なインターフェースや豊富な可視化機能を備えていることです。そのため、データ分析の専門知識がなくても、比較的容易にRFM分析を実施できます。また多くの場合、デシル分析やABC分析などの関連する分析手法も同時に行えるため、より多角的な顧客分析が可能となります。
導入を検討する際は、自社のニーズに合った機能を持つツールを選択することが重要です。
スプレッドシートやExcel
Microsoft ExcelやGoogle スプレッドシートなどの表計算ソフトを使用してRFM分析を行うこともできます。これらのツールは多くの企業ですでに導入されており、追加コストなしで利用できるという大きな利点があります。
ExcelやスプレッドシートでRFM分析を行う場合、データの集計や分類、スコアリングなどの作業を手動で行う必要があります。そのため、ある程度のスキルと時間が必要となりますが、自社の状況に合わせてカスタマイズしやすいという利点もあります。
ただし大量のデータを扱う場合や定期的に分析を行う必要がある場合は、作業効率の面で課題が生じる可能性があります。
MAツール
MAツールの中にも、RFM分析機能を備えたものがあります。
MAツールの強みは、RFM分析の結果を直接マーケティング施策に反映できることです。例えばRFM分析で特定した優良顧客グループに対して、自動的にパーソナライズされたメールを送信するといった施策を簡単に実行できます。
ただしMAツールは比較的高価であり、導入には一定の投資が必要となります。そのため、マーケティング活動の規模や目的、予算などを考慮して導入を検討する必要があるでしょう。
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