ECの現場では、売上を左右する企画やマーケティング施策よりも先に、データの突合・整形・クレンジングといった「前処理」に時間を取られてしまう、そうした声が多く聞かれます。手元にデータが揃うまで施策が動かせず、気づけば本来やりたかった顧客対応が後回しになる。この構造は、多くのEC・D2C事業者に共通する悩みです。
本記事では、当社シナブルがEC事業に携わる担当者・責任者1,006名に実施した「EC・D2C事業者における顧客データ分析と業務リソース」に関する調査(2026年7月)の結果をもとに、顧客データ活用が停滞する要因と、その解消に向けた考え方を整理します。まずは現場で何が起きているのかを、数字で確認していきましょう。
なぜEC担当者は「本当はやりたい施策」を実行できないのか?

調査では81.6%が、データ整備などのノンコア業務に追われ、本来実施したかった施策や顧客対応を諦めた経験があると回答しています。前処理という「見えにくい負担」が、施策の実行力そのものを削っている状況です。
「本当は実施したかった企画・マーケティング施策・顧客対応を、データ整備や分析などのノンコア業務(前処理)に追われたことが原因で諦めた経験はあるか」という問いに対し、「頻繁にある」が21.4%、「たまにある」が60.2%で、合わせて81.6%が諦めた経験を持つと回答しました。「全くない」はわずか4.2%です。
注目すべきは、これが一部の企業に限った話ではないという点です。8割を超える担当者が「やりたくてもできなかった」経験を持つということは、機会損失が個社固有の問題ではなく、EC運用の仕組みそのものに埋め込まれていることを示唆します。では、その原因となる「前処理」は、どれほどの負担になっているのでしょうか。
顧客データの「前処理」はどれほど現場を圧迫しているのか?

業務時間の4割以上をデータの前処理に費やす担当者は合計77.2%にのぼります。手法は「表計算ソフトでの手作業」「都度CSVをエクスポートして手動統合」が上位を占め、抽出依頼から入手までのタイムラグも大きい状況です。
前処理に業務時間の4割以上——回答者の約8割
「自社ECの管理・運用業務のうち、データの前処理(突合・整形・クレンジングなど)に費やしている業務時間の割合」を尋ねたところ、「6割〜8割未満」が34.9%、「4割〜6割未満」が33.9%と突出しました。「8割以上」の8.4%を合わせると、業務時間の4割以上を前処理に充てている担当者は77.2%に達します。データを「使う」前の「整える」段階に、業務時間の多くが吸い取られている実態がうかがえます。
手作業・都度CSVエクスポートが依然として主流
前処理の手法(複数回答)では、「自社エンジニアが組んだ専用のプログラム」が39.9%、「表計算ソフトを用いた手作業」が39.7%、「カートシステムや各モールの管理画面から都度CSVをエクスポートし、手動で統合」が37.8%と続きました。一方、「データ統合専用ツールを用いた自動処理」は30.3%にとどまります。多くの現場が、属人的な作業や手動の統合に依存していることが分かります。
データ抽出は「即日」わずか17.3%、多くが翌日以降
さらに、顧客データの集計や抽出を他部署のエンジニアや外部ベンダーに依頼した場合、データが手元に届くまでの平均時間は「即時」が17.3%にとどまりました。「翌日」が35.5%、「2〜3日」が29.5%、「1週間」が9.7%と、外部に依頼している担当者の多くが1日以上のタイムラグを経験しています。施策のスピードが、データ入手の待ち時間に左右されている構図です。
ツールを導入しても「活用しきれない」のはなぜか?

MAやCRM、CDPは導入が進む一方で、「十分に活用できている」と答えた割合はいずれも3割前後にとどまります。背景には「管理画面や操作が複雑(37.0%)」「専門知識やノウハウがなく心理的ハードルが高い(35.6%)」といった、“使う人の負担”の大きさがあります。
自社ECに導入している各ツールの活用状況を見ると、「導入済み・十分に活用できている」と答えた割合は、自社ECカートシステムで34.3%、CRMツールで29.2%、BIやアクセス解析ツールで27.0%、MAツールで25.7%、CDP・データ統合ツールで24.0%でした。「ある程度活用できている」を合わせれば7割前後に達するものの、“使いこなせている”という実感を持つ担当者は限られます。
活用が進まない理由として最も多かったのは「ツールの管理画面や操作が複雑で分かりにくい」で37.0%。次いで「専門知識やノウハウがなく、心理的なハードルが高い」が35.6%、「データの突合や前処理に時間がかかる」と「サポート体制が良くない・不十分」がともに34.7%で並びました。ツールそのものの機能不足よりも、“使う人の負担”がボトルネックになっていることが読み取れます。
前処理に追われることで、何が「後回し」になっているのか?

諦めた施策の1位は「UI/UXの改善・ページ作り(51.5%)」、2位は「パーソナライズされたお役立ち情報・メルマガの提供(45.0%)」。いずれも顧客体験や売上に直結する施策が、後回しにされています。
ノンコア業務に追われて諦めた施策を尋ねると(諦めた経験がある人が回答)、「サイトをより見やすく、買い物をしやすくするためのUI/UXの改善・ページ作り」が51.5%で最多でした。続いて「お客様ごとにパーソナライズされたお役立ち情報・メルマガの提供」が45.0%、「限定クーポンやイベント・キャンペーンの企画」が32.6%、「購入者へのお礼やレビュー・口コミへの丁寧な返信」が30.7%と並びます。
これらはいずれも、顧客との接点を深め、リピートやLTV(顧客生涯価値)の向上につながる施策です。データを整える作業に時間を奪われた結果、売上や顧客満足に直結するはずの取り組みが削られている——調査からは、そうした本末転倒とも言える状況が浮かび上がります。
データ処理から解放されたら、EC担当者は何をしたいのか?

削減できた時間で取り組みたいのは「既存顧客のロイヤリティ向上(50.3%)」「顧客対応の強化(50.0%)」。求める機能は「ノーコードでシンプルな管理画面(43.7%)」「AIアシスタント・自動生成(39.6%)」が上位で、41.9%がMA・CRMツールの見直しを検討しています。
「データ処理の時間がシステム化によって削減されたら、どのような業務に時間を費やしたいか」という問いには、「既存顧客のロイヤリティ向上の設計」が50.3%、「顧客対応の強化」が50.0%と上位に並びました。担当者の関心が、新規獲得だけでなく既存顧客との関係構築にも強く向いていることが分かります。
一方、今後MA・CRMツールに期待する機能としては、「専門知識がなくても直感的に操作できるノーコード・シンプルな管理画面」が43.7%、「自社ECの状況に合わせた施策を提案・自動設定してくれるAIアシスタント・自動生成機能」が39.6%、「複数システムとのノーコードでの自動データ連携機能」が31.6%と続きました。改善のために検討している施策でも、「現在のMA・CRMツールの見直し・リプレイス」が41.9%で最多となっています。
つまり現場が求めているのは、高度な専門知識を前提としないこと、そしてデータの統合から施策の実行までを、手作業を挟まずに完結できることだと言えます。
「顧客データ活用の停滞」を解消するには何が必要か?
鍵となるのは、分散したデータを自動で統合・整備するCDPと、専門知識がなくても施策を回せるノーコードの運用環境を、一つの基盤に揃えることです。当社が提供する「EC Intelligence(ECI)」は、この一気通貫を前提に設計されています。
ここまで見てきた課題——前処理の負担、活用しきれないツール、後回しになる顧客施策——は、いずれも「データがつながっていない」「専門知識がないと動かせない」という共通の根に行き着きます。逆に言えば、データ統合を自動化し、施策の実行までをノーコードで完結できる環境があれば、これらの負担は解消に向かいます。
シナブルが提供する「EC Intelligence(ECI)」は、CDP機能による顧客データの自動統合・クレンジングを土台に、サイト内検索・レコメンド・MA・Web接客・アンケート配信までを一つのプラットフォームに統合しています。都度のCSVエクスポートや手作業の突合に頼らず、整ったデータをそのまま施策に活かせる設計です。
運用面では、専門知識がなくてもリアルタイムに複雑なセグメントを作成できるノーコード管理画面を備え、メール・LINE・SMS・アプリ通知を一元的に配信できます。A/Bテストと効果測定も基盤内で完結するため、「作って、試して、改善する」というサイクルを現場主導で回せます。実際に、複数ツールを一本化して運用コストを約50%削減した例や、メール経由売上が27%向上した例もあり、継続率は97.8%を維持しています。
データを「整える」時間を仕組みで圧縮し、その分を既存顧客との関係づくりや顧客対応に振り向ける。調査で多くの担当者が望んでいた働き方は、こうした環境から実現に近づきます。
まとめ
今回の調査からは、EC担当者の81.6%がデータ前処理などのノンコア業務に追われて施策を諦めており、業務時間の4割以上を前処理に費やす担当者が77.2%にのぼる実態が明らかになりました。後回しにされているのは、UI/UX改善やパーソナライズ施策といった、売上と顧客体験に直結する取り組みです。求められているのは、データ統合を自動化し、専門知識がなくても施策まで完結できる環境への転換です。まずは自社の前処理にかかる時間と、そこで諦めている施策を棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。
※本レポートのPDF版(全設問の集計結果を含む)をご希望の方は、こちらからダウンロードください。
URL:https://www.scinable.com/document/17
よくある質問(FAQ)
Q. 調査の対象者と実施時期を教えてください。
A. 本調査は、EC(Eコマース)事業を展開する企業に勤務し、自社ECサイトへのツール導入と、顧客データ分析やCRMを含むマーケティング施策の企画・実行に携わる担当者・責任者1,006名を対象に、2026年7月1日〜3日にインターネット調査として実施しました(調査元:株式会社シナブル)。
Q. 「データの前処理」とは具体的に何を指しますか?
A. 複数のシステムやモールに分散した顧客・購買データを突き合わせる「突合」、表記や形式を揃える「整形」、重複や誤りを取り除く「クレンジング」などを指します。施策に使える状態へデータを整える工程で、本調査では業務時間の4割以上をここに費やす担当者が77.2%にのぼりました。
Q. MA・CRMツールを導入すれば前処理の負担は減りますか?
A. ツールを導入するだけでは、管理画面の複雑さや専門知識の壁が残り、活用しきれないケースが少なくありません。調査でも活用の最大の障壁は「操作の複雑さ(37.0%)」でした。CDPによるデータ統合とノーコードの運用環境がセットになっているかを、選定時に確認することが重要です。
Q. 前処理の時間を減らせたら、まず何に取り組むべきですか?
A. 調査では「既存顧客のロイヤリティ向上(50.3%)」「顧客対応の強化(50.0%)」への意向が高くでました。まずは、既存顧客の行動データを使ったパーソナライズ配信や、レビュー・問い合わせへの丁寧な対応など、リピートに直結する施策から着手するのが現実的です。
ECサイト特化のデータ分析&マーケティングシステム「EC Intelligence」を開発。「テクノロジーで商取引を革新し、ショッピング体験をより良くする」というビジョンの元、ECサイト・オムニチャネルの体験がさらに豊かになる情報を発信します。